家庭教師 志摩子の場合

なんでこんなことになってしまったのか。

私、水野蓉子は今、小寓寺にいる。

それもこれも、みんなアイツらのせいだ。

「わたしは、祐巳ちゃんとこ家庭教師に行って面白かったぁ。」

「わたしも由乃ちゃんのところに行って、……うふふ。」

私の友人はどうしてこんなのばっかりなのだろうか。

私が面倒くさい友人を持つ癖があるといっても、これはやりすぎだろう。

私は人生を間違えたのではないかと、真剣に考え始めている。

 


そんなこんなな訳で、私は藤堂志摩子の家庭教師を務めているわけだ。

そもそも聖は祐巳ちゃんじゃなく、志摩子の所にくるべきじゃないの。

私が祐巳ちゃんのところに行っていたら、楽しかっただろうなぁ……。

そんな妄想が頭の中をよぎって仕方がない。

だって、暇なんだもん。

志摩子は超が付くほど優等生。

特にわたしが教える必要もないので、ただボーっと見ているだけなのだ。

 


「……さま、蓉子さま!」

「えっ、あっ、な、何? 志摩子?」

危うく眠りの国へ行きかけるとこだった。

それだけ暇なんだから仕方ないじゃないと、心の中で言い訳しつつも、

元紅薔薇の威厳を損なうことの無いよう、きりっとした表情を志摩子に向ける。

「蓉子さま、お疲れでしたら……、わたしの事は構いませんので、家でお休みください。」

さすがに優等生の志摩子だ。

気配り方にしても優等生である。

が、私にも優等生だった意地もあるので、

「いいえ、気にしないで、それより、なにかわからないところとか無いかしら?」

上級生として、志摩子のわからないところを一つでも教えてあげたい気分になったのだ。

「なんでも聞いていいわよ。ちゃんと答えてあげるから。」

まだ志摩子は2年生。

さすがに私がわからないような問題はないだろう。

私は得意げに志摩子に問いかけたのだった。が、

「わからない……ところ……。」

志摩子は困惑するように、教科書をパラパラさせているが、全くわからないところが無いのだろう。

教科書はパラパラと最後のページまで進んでしまっている。

教科書を閉じて、なにかわからないものがあったか思案する志摩子。

しばらくして、志摩子はなにかに思い当たったのか、その純粋な眼を私に向け、

「わたし、蓉子さまのお気持ちがわかりません……。」

そのように発したのだ。

「へ?」

なんでわたしの気持ちなの?

志摩子の問いかけの意味がわからず、年上の、さらに元薔薇様としては恥ずかしいほどうろたえてしまった私。

そんな私に助け舟を出すように、志摩子は、

「蓉子さまは、お姉さまがお好きでいらっしゃると思うのですが……、なかなか行動なさらない。」

「わたし、そんな蓉子さまの心中がわかりません。どうか教えてくださいませ。」

純粋な眼のまま、ひしひしと迫る志摩子。

「え、え? 私が、聖のことを……好き?」

「そんなわけないじゃない……ね、志摩子。」

私も内心では、聖の事を想う気持ちに気付いていたが、志摩子にあっさりと見破られ狼狽していた挙句、嘘を言って逃げることにした。

だが志摩子はそんな嘘などあっさり見破る。

「なぜ、その様な嘘をおっしゃられるんですか? 私は蓉子さまと、聖さまにお幸せになって欲しくて……。」

「わたしにお手伝いさせてください。蓉子さまはお姉さまと結ばれるべきです。」

 

 

 

その後も志摩子は私の聖への気持ちをズバズバと当てていき、

そんな志摩子に恐怖をなした私は泣いて家に逃げ帰りました

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