何故このようなことになってしまったのだろうか。


マリア様の思惑は我々平凡なる僕どもには決して理解できないものなのであろう。

ああ、マリア様、このような状況を遥かなる高みから見ていらっしゃるのですか………。

この狂った学園を……


薔薇最強決定戦

1
キンニク星の金のマスクと銀のマスクは少年の
「戦ったらどっちが強いの?」
の問いに、お互いの首を刎ねる事で答えを見つけ出そうとした。

楚の国の商人は王にその矛と盾を打ち合わせてみよとの問いに返答を失った。

そして山百合会は


「三人の生徒会長で、ぶっちゃけ最強は誰YO?」


という、誰が発したか。今となってはわからない問いに対し、


………


お互いに戦うことで、その結論を導き出そうとしたのであった。


今、思えば……馬鹿なことをしたものであった。

 

 

 

リング上で、山口真美は、その声を張り上げ叫んだ。


「黄色コーナーより、ミスター・リリアン! 学園一の武闘派は他所の薔薇には譲れない! うなれ竹刀!
黄色の薔薇は、誰にも負けぬ! ロサ・フェティダ! 支倉令の入場です!」


どうやら入場テーマ曲は彼女のセコンドが選んだものであるらしい。


どこかで聞いたことのある、時代劇のテーマソングが高らかと鳴る中、支倉令は背後に島津由乃をセコンドに伴い、
剣道の防具に身を包まれ、体育館に設けられた特設リングに向け入場してきたのであった。


周囲から黄色い歓声が轟くと、入場する二人を包んでいた。


いくら土曜日の午後とはいえ、体育館内は大勢の観客に埋まっている。


皆、リリアン高等部の生徒ではあるのだが、お前ら、いくら刺激のない生活に退屈してるといっても暇すぎるだろ、
そうツッコミを入れたくなるのを、我慢することが出来ないほどであった。

かく言う間に、令はリングへと到着すると、エプロンに取り付けられた階段を登り、颯爽とセカンドロープをくぐると、リング中央へ向かい、黄色い声援に手を振り応えている。

「続きまして、紅コーナー! リリアン女学園のプリンセス・オブ・プリンセス! 紅薔薇女帝伝説の継承者! 
紅の薔薇には黄薔薇の血の色がよく似合う! ロサ・キネンシス! 小笠原祥子の入場です!」


真美は、令の入場テーマが収まるのを確認すると、威厳を込めた声で紅薔薇の入場を告げる。

 


会場内に響き渡るテーマ曲は……、安来節!
こちらも妹の選曲であったのであろう。

というより、作者が他に似合う曲を探すのが面倒でもあった。
安来節のリズムに乗り? 祥子は花道をツカツカと歩を進める。
こちらはセコンドを連れていない。
どうしたのであろうか?
どうせ、いつもの祥子の我侭から始まったケンカだろ。そんな空気が会場内に充満していた。
祥子はリング側まで歩みを進めると、会場に設置された観客席の最前列に位置する場所に、見知った顔を発見した。


「あひゃひゃひゃひゃ。安来節だよ! 安来節!」


「おもしれぇ! 祥子最高だよ! 祥子!」


「あはっ!」


爆笑している元薔薇さま達をなるべく見ないようにして、祥子はリングに登ることにした。


見てしまうと、怒りに包まれそうで、そこは祥子がらしくないほど我慢したのであった。

 

2

 

リング上に、遂に合間見える両雄。


令は剣道の装備に身を包んでおり、祥子はリリアン女学園の制服に身を包んでいた。


「えと、ボディーチェックなんですが……。」


そこに、ふと亡霊のように浮かび上がる三人目。


いや、実は最初からそこにいたのだが、存在感が無い為、リング上には二人しかいないように見えていたのである。


彼女はこの試合のレフェリーを任されており、その大役を果たそうと、この日に向けて、人知れぬ努力を積んできたのであったが、そんなことどうでもいい。

彼女の名前もどうでもいい。どうせ、桂だ。


桂は、いや名前を出す必要は無いので、レフェリーは、リング中央に祥子と令を手招きすると、ボディーチェックを開始する、が、


「とりあえず、その面は反則だから取れよ!」


チェックするまでもなく、間違っている物に対してツッコミを入れるところは、レフェリーの進化といえよう。


さらには、薔薇様にタメ口きくほどにまで、彼女は香ばしいキャラになっていた。


しばらく見ないうちに、人というものは変わるものである。


「さあ、両雄、ボディーチェックを受けながら、対面しております! 申し遅れました、わたくし、実況の山口真美と、解説の。」


「築山三奈子です。」


レフェリーが存在感を出してきた為であろうか、実況席からはこの試合の解説者と共に新聞部がしゃしゃり出てきたのであった。


つくづく、出番争いという物は過酷である。


「解説の三奈子さま、この薔薇最強決定戦はどうなるとお思いですか?」


「わたしは、新聞のネタになればなんでもいいよ。」


「………、簡潔な説明ありがとうございました。……さあ、そうこうする間に、リング上では両者各自のコーナーへ戻ると、試合開始のゴングを待っている!」


リング上に眼をやると、とりあえず面は不許可であったが、令のビジュアル的個性不足のため特別に胴の着用を許され、それを装備する令は黄色コーナーに。

そして、こちらはなにの問題も無く、制服を身に纏った祥子が紅コーナーで、お互い対角線上に睨みをきかせているところであった。


「さあ、レフェリーがゴングを要請しております! それでは聖さま! ゴングをお願いします!」


真美はリング上、レフェリーが手で合図を送ったのを見届けると、実況席横の元白薔薇さまにゴングを鳴らすよう目線を送る。


「まかせなさい。」


聖は、そう言うと立ち上がり、隣に座る友人の額を平手で叩いた。


『ぱち〜〜〜〜ん』


「さあ始まりました! 江利子さまの額が鳴らされ、遂に薔薇最強決定戦の開始です! それにしても江利子さまの額はいい音をかなでることこの上ないです!」

 

続く

 

 

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